<第八回>

♪知ってる神社を〜、歩いてみたい〜
     ♪どこか近場で〜 (取材を)すませたい〜


キツネ
「ゆーざー諸兄よ、元気帰かや?
 えろげのこんてんつとは思えぬ、おキツネ神社探訪・第八回目じゃ。
 今日は先の予告通り―――」


恭平
「うおっ!? 旧松山邸だ、松濤館だ! わーいわーいっ」

 

キツネ
「こりゃ、冒頭から趣味全開で突っ走るでないわ!
 参詣先は、その収納庫より三間先じゃ」

恭平
「そうは言うがな、キツネ。
 取材費が底をついてしまったんだぞ。
 色んな神社を巡る日帰り旅行も、今回ばかりは無理だ」

キツネ
「天狐の神算にぬかしなし。すべてワチに任せてたも」
   

キツネ
「ほっほっほー、打出天神社で金運を授かろうぞ」

恭平
「は? ここは天満宮……
 だってそう書いてあるし、社紋もばっち梅マークじゃないか。
 御利益は学業関係だろう?」

キツネ
「否、この社は打出小槌町に建っておる故、
 そのへんは、祭神にうまいことやってもらうのじゃ。
 大判小判が、ざっくざっくぅ〜」

恭平
「うまいことって―――」

 ちゃり〜ん
   ガラガラガラ
        ぽむぽむ


キツネ
「金、カネ! 金庫、キンコ! ダイヤ、だいや!」

恭平
「……」

キツネ
「ふ……これでワチ等、明日には大金持ちじゃ。
 むにょ? チビスケ、何をしておる?」

 

恭平
「珍しいな、子連れの狛犬がいるぞ」

キツネ
「それは、こないだやったではないかや。もう充分じゃろう?」

恭平
「うるさい黙れ、神の御使いのくせに俗物キツネめ。
 きちんと現実的に、懐をあったかくしろ」

キツネ
「ぶみ、それならそうと、はやく言ってくれれよいものを」

 ぴょ〜ん、ぼっふん
   ごそごそ、もぞもぞ、すりすりすり


恭平
「ええーい、暑苦しい!
 俺の懐に潜り込むんじゃない」

キツネ
「なんだかんだと、ややこしいチビスケじゃのぅ。
 要するに、お足が欲しいのじゃな?」

恭平
「俺は最初からそう言ってる」

キツネ
「ふむぅ……」

 どろろーん

 

キツネ
「ぬんっ、下唐櫃山王神社じゃ。
 ♪東天紅トテコロ、くくククくく〜」

 ほりほりほり
     ざくざくざく


恭平
「なんだその呪文は? どうして境内に穴を掘るんだ?」

キツネ
「んむ、かつて神功皇后が、この辺りに、金細工の雌雄の鶏を埋めたのじゃ。
 埋蔵場所は、隣の唐櫃石神社とも伝えられておるが、
 ワチの千里眼によれば、金鶏の古式祭礼が行なわれておる、こっち側じゃ」

恭平
「もしかして、その呪文みたいなのは、鳴き真似か?」

キツネ
「ほっほっほー、本来なら童子が二十八人がかりでやるんじゃがの、
 この度は神儀ではなく発掘じゃ。特に問題はなかろう。
 皇后曰く『村民危急の際に掘り起こせ』
 ありがたく頂戴し、売って売って売りさばくのじゃ」

恭平
「小難しい解説してるが、やってる事は賽銭ドロと同じだ!
 しかも、俺たちはあくまでご近所さんなだけで、地元の氏子じゃない」

 ピシャーーン
    どぉぉおおん、ごろごろごろ……


恭平
「か、雷? 天罰覿面?」

キツネ
「こん!?
 チビスケ、身代わりになってたも」

 どか!

恭平
「ぐはっ」

 ばたん! ← 恭平が雷雲のほうへ倒された
  バビューーーーーーーーーーン ← キツネ大逃走

恭平
「キツネー!
 ゲーム本編じゃちんたら飛んでるくせに、こんな時だけ猛スピードで逃げるなー!」

 ………………。
 …………。
 ……。

   

茉莉絵
「あ、録音はじまった?」

詩音
「ん……カメラまわってる……」

茉莉絵
「わきゃ!? か、顔絵がパンパンじゃない!!」

詩音
「力加減が分からなかったせい……。
 それより、ほら……」

茉莉絵
「あ……はいはいは〜い。
 そんなわけで三年生コンビのボク等・能登茉莉絵と桑原詩音は
 白峯大神宮へやって来たのさ」

詩音
「……どういうわけ?」

茉莉絵
「恭平が神様から逃げてるあいだ、適当に間を持たせるんじゃない?
 好きな神社に行って、会話のキャッチボールしてればいいって」

詩音
「デッドボール……」

茉莉絵
「お喋りが難しい事くらい、分かってるさ。
 ボク等は恭平みたいに漫才できっこない。
 気乗りしないなら、何か芸をして穴埋めしなよ」

詩音
「芸……。
 …………。
 ……………ゲェーーーーーーッ!」

茉莉絵
「ヌ、ヌヌヌ?」 ← 詩音のアダ名

詩音
「………ぅ」

茉莉絵
「恥ずかしがるくらいなら、やんなきゃいいのに」

詩音
「白峯大神宮は、スポーツに御利益がある……。
 それではさっそく、境内へ移動……」

 ずかずかずかずかずか!

茉莉絵
「そんな強引に誤魔化さなくたって、いいじゃない」

 

詩音
「神前に色んなボールがお供えされてる。
 ここは蹴鞠で有名なところ。
 まり精大明神が祀られて、スポーツ関係者の崇敬があつい。
 ……茉莉絵の専門は水泳なのに、どうして球技系の神社に?」

茉莉絵
「うっさいよ。
 ボクの名前は茉莉絵だから、蹴鞠の神社がピッタリなのさ」

詩音
「……そこに砂が盛ってある。
 きっとラグビーボールを立てるため。
 茉莉絵……ボール借りてきて、蹴ってみる……?」

 

茉莉絵
「あはは、良いね!
 思いっきり蹴ったら、スカッとしそう。
 ヌヌヌも一緒にやらない?」

詩音
「……。
 ………バカ」

茉莉絵
「な、なにさ」

詩音
「このままだと、私達まで罰があたりそうなので、場所移動を……」

 すたすたすたすた

茉莉絵
「待ちなよ、どこ行くのさ?」

詩音
「鳥居の前の百均で、焼き芋売ってる……」

茉莉絵
「そ、それ神社探訪と全然関係ないじゃない?」

詩音
「ん……しからば…」

   

詩音
「護王神社……。
 足腰に御利益……」

茉莉絵
「そっか、ヌヌヌの本職は体力勝負だもんね」

詩音
「ん……。
 あとイノシシ……」

   

茉莉絵
「わきゃ!?
 マジだ。狛犬の代わりに、狛猪が居る!
 面白いなぁー、なんでなんで? 来年イノシシ年だから?」

詩音
「んーん……ここに祀られてる、平安京を作った偉い人が、猪を守ってたから……。
 それはともかく、ボタン鍋」

茉莉絵
「……お腹空いてるんだ、ヌヌヌ?」

詩音
「ん……」

茉莉絵
「いいとも、行こ行こ!
 最上級生の特権さ。あとは可愛い後輩にまかせればいいじゃない」

詩音
「ん!(こくこくこくっ)」

 …………。
 ……。

彗佳
「ど、どうしよう由美ちゃん、先輩たちエスケープしちゃったよ。
 今夜は天体観測のまえにミーティングひらいて、説諭と訓戒だねっ」

由美
「た、楽しそうやね、彗佳?」

彗佳
「彗佳ね、前々からこのコンテンツに出たかったの」

由美
「そうやのぉて、マリさんと詩音さんをしめれるんが愉悦―――
 ごほん、げほん!
 ほんなら、恭ちゃんが安全圏に駆け込めるまで、ウチ等が引き継ごな」

彗佳
「うんっ」

由美
「仮巫女のウチが、おすすめするんは……」

   

由美
「熊内八幡神社やよ。
 ちんまい丘のてっぺんに建っとぉねん。
 彗佳、一緒にお参りしょう」

 てくてくてく

 

 ぎゅむぎゅむぎゅむ

彗佳
「え? この足音は……」

由美
「そう、この境内は、ウチが仮巫女の修行させてもぉとぉ、星稜神社とおんなじやよ。
 鳴き砂が敷きつめられとぉねん」

 ぎゅむぎゅむぎゅむ

彗佳
「えへへへ、雪のうえ歩いてるみたいな音がするね」

 

彗佳
「境内からの見晴らしも、すっごく素敵。
 お天気がいいと、瀬戸内海はもちろん紀伊水道まで遠望できて―――
 でもでも……」

由美
「彗佳、どないしたん?」

彗佳
「由美ちゃん、神社探訪の第一回目から疑問だったんだけど、
 『おキツネsummer』は信州のお話なのに、
 どうして「神社探訪」は、兵庫とか兵庫とか兵庫とか兵庫とか京都とか兵庫とか兵庫とか京都とか兵庫とか大阪とか京都とか兵庫とか兵庫とか兵庫の神社ばっかりなの?」

由美
「うにゃ!?
 ほ、ほほ、ほんまやね、海が見渡せる丘やからとちゃう?
 熊内八幡神社には、海幸山幸の彦火々出見命が鎮守として祀られとって―――」

彗佳
「??? 彗佳、そんなこと訴いてないよ?」

由美
「みゃっふー!?
 恭ちゃんからメールきよった。
 キツネに頭下げさせて、神さんに許してもろてんて。
 ウチ等、代打せんでよぉなったから去の。
 今からスーパーに買い物いったら、特売タイムに間に合うわ。
 彗佳も買い出し手伝ぉて」

彗佳
「ねえ、学園は携帯禁止だよ?
 由美ちゃんだって、持って無かったよね?」

由美
「ぁ……にゃ……ぅ……みゃ……っ」

 ……。
 …………。

   

キツネ
「ぬんっ、喜多向稲荷神社じゃ」

恭平
「切羽詰まった従姉妹の、心の悲鳴が聞こえる……」

キツネ
「梓(由美)の相方はチビッコ(彗佳)じゃったの?
 チビスケの家族だけあって、怜悧この上もない突っ込みで、梓を責めておるのではないかや?」

恭平
「俺の義妹を、ドSあつかいするな!」

キツネ
「否々、チビスケは嫌がるワチを神前に連行し、
 弾劾裁判を断行しよったからの……ぶつぶつぶつ」

恭平
「キツネが、罰当たりな真似するからだろ」

キツネ
「ぶみっ、じゃから反省し、こうやってゲンかつぎに参ったではないか。
 『北向き』を『喜多向き』に転じ、招福開運を得ておるのじゃろう」

恭平
「そーいや、ネクストン関東開発室の傍には、喜沢通りがあるが
 そこに架かってる橋の名前は、鬼沢だった」

キツネ
「言霊じゃ。
 チビスケも懐具合を嘆くより、もっと前向きに構えてたも」

恭平
「……てゆーか、金欠に陥った根本原因は、
 探訪記でいつも、キツネがバカスカ買い喰いしてるからだぞ?」

キツネ
「す、すぴ〜、すぴ〜、すぴ〜」

恭平
「両眼を見開いたまま、タヌキ寝入りするんじゃない」

キツネ
「パチッ。
 この社の祭神は、光玉大明神じゃ。
 宝珠を翔る天狐に通じるものがあるのぅ、ほっほっほー」

恭平
「字面だけ見て、いい加減な発言してないか?
 ご由緒書きには、産業発展と工場安全の神様だって記されてるぞ」

キツネ
「ワ、ワチも、星稜が民草の安寧を司っておるのじゃ!
 チビスケの心労ごとき、たちどころに霧散させようぞっ」

 どろろ〜ん

 

恭平
「稲荷市場だと?」

キツネ
「ほっほっほー、稲荷市場の商店街を抜けてみよ」

 ぬけぬけぬけ

 

キツネ
「松尾稲荷神社じゃ」

恭平
「へぇー……下町の御社の良い風情だな」

 

恭平
「おや? 手水舎にキツネの意匠が。
 こういうのは、初め見た」

 

キツネ
「ほっほっほー、玉の碑もあるのじゃ」

 

恭平
「おおっ、中は随分と立派だな」

キツネ
「稲荷が大勢おるのじゃ。
 順番にお参りして行くと、一番奥にあの御仁が―――」

 

恭平
「隠れキャラのように、大黒様が祀られてる……
 大黒? いや、ちがうな、アレは―――」

キツネ
「チビスケよ、ちんちんが大きな神は?」

恭平
「大コック!
 ……。
 だ、だから違うって!!」

 

恭平
「ビリケン様じゃないか。
 まさか、稲荷神社に鎮座してるとは、予想もしてなかった」

キツネ
「大阪ばかりが有名じゃが、こちらの御霊は和洋折衷じゃ。
 背に金子の大判を抱え、手には打出小槌を握っておる」

恭平
「色んな福を招いてくれそうだ。
 よし、さっそく参拝しよう」

 ちゃり〜ん
     ぱんぱんっ


恭平
「開発も、いよいよ佳境をむかえています。
 滞りなくマスターアップが迎えられますように。
 おキツネコンテンツの連載を、落とす事ありませんように」

キツネ
「のうチビスケ、
 神社探訪のついでにお守りグッズを購入し、ゆーざー諸兄にぷれぜんとしてはどうじゃ?」

恭平
「旅費が不足してるのに、無茶を言うキツネだ」

キツネ
「それなんじゃがのぅ、
 ワチ等は、神通力で瞬間移動しつつ、探訪しておるではないかや?
 ぶっちゃけ、旅費なんぞ要らぬと思うのじゃが……」

恭平
「ハ……ッ!?  そ、それを先に言えっっっ」

キツネ
「ほっほっほー、いつ気がつくのか見守っておったのじゃ」

恭平
「お、おのれ〜っ。
 最近は稲荷分が多すぎた。
 次回は俺主導で探訪してやるから、覚悟しておけ。
 ……あと最後に、キュウリ、キュウリ、キュウリ!」

キツネ
「も、もぎょおおぉぉぉ〜〜〜〜〜……(ガクン!)」

♪知ってる神社を〜、歩いてみたら〜
          ♪そろそろ小ネタが、尽きてきたよ〜

 ………………。
 …………。
 ……。
 続く?



かいたひと/しゃしん:中本穂積


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