<第五回>

♪知ってる神社を〜、歩いてみたい〜
     ♪どこか近場で〜 (取材を)すませたい〜


恭平
「ユーザーの皆さん、こん××わ。
 神社探訪も今回で第五回目となりました。
 ジングルでは『♪どこか近場で〜』と唄われてますが、今回はネクストンから遠く離れています。
 …………。
 ……。
 ええーと、キツネが居ないと間が持ちませんね。
 いま音声収録の関係で池袋に来てるんですよ。
 休憩時間を利用して、このあたりの神社仏閣を訪ねてみようかな。
 俺ひとりだから至らぬ点もあると思いますが、最後までよろしくお付き合いお願いいたします」

 

恭平
「キリのいいところまで収録が終わりました。
 中座するなら今しかない!
 行ってきます」

   

恭平
「威光稲荷神社。
 美少女ゲームメーカー密集地帯にある、お稲荷さん。
 面白いなぁ。鳥居が連なる参道のド真ん中から、樹が生えてきてるぞ。
 キツネ像も特徴的です。
 普通は座っている姿ですが、この社では跳ねており躍動感にあふれています」

 

恭平
「ご神木を中心に、境内には複数の祠が……
 ……おや?」

 

恭平
「パッと見はごくありきたりの像だけど……
 よく観察すると子狐を懐に抱きくるんでいますね。
 こういうのは、はじめてみました。
 池袋特有の意匠でしょうか? ちかくを散策して調査してみます」

 …うろうろ……
  ……ちょろちょろ…

 

恭平
「軒先に、特徴的な提灯が吊るされている通りに出ました。
 向こうから祭り囃子が聞こえてきます。
 御神輿のあとを付いてゆくと―――」

   

恭平
「大鳥神社に辿り着きました。
 ちょうど縁日です。
 ……キ、キツネが不在で助かった。露台に絶対へばりつくぞ、あの食いしん坊は。
 おほん!
 解説役の九尾に代わり、俺が御由緒板を孫引きします。
 この神社は、もともと鬼子母神境内に創祀されていたそうな。
 明治維新後は神仏分離によって、この地に遷座し今日に至る……んだよな?」

 

恭平
「お祭りの喧騒からやや離れ、本殿のわきにまわると、やはり稲荷社が建っていました。
 玉杉稲荷大明神。
 ちなみに『おキツネsummer』のキツネは玉に寝そべり、楠の根元にいます」

 

恭平
「この像も子狐と一緒だ……。
 抱っこするというより、頭を撫でている様子ですが、親子が連れ添っている点は同じ。
 威光稲荷と偶然一致しているだけなのか……?
 他のところにも詣で、お稲荷さんを検証してきましょう」

   

恭平
「大鳥神社より徒歩数分、法明寺鬼子母神に到着」

   

恭平
「境内に大木・公孫樹を囲むように武芳稲荷大明神が祀られています。
 公孫樹とは銀杏のこと。
 爺さんが種を撒いても、実がなるのは孫の代。だからこの名がついています。
 ………。
 すみません、俺にはお稲荷さんの知識がなく、適当なウンチクで誤魔化しました……」

 

恭平
「木陰のもと金網に遮られてしまい写真では判然としませんが、ここも親子キツネの像が据えられています。
 ひょっとして、池袋だけにみられるキツネの決まり事なんだろうか……。
 ……おっと? そろそろ収録再開です。
 いったんスタジオに戻らねば」

 …………。
 ……。

 

恭平
「収録を終え、ネクストン関東開発室に向かう帰路、なんとなくお茶の水に寄ってみました。
 妻恋神社にある妻恋稲荷。
 ここにも子連れのキツネ像と思しきものが。
 しかし、残念ながらデジカメのバッテリーが切れてしまい、撮影できませんでした」

 ……。
 …………。

 

恭平
「いよいよ、大阪へ帰る日が来ました。
 結局、子連れ像の謂われは分からずじまい。
 最後に、駅のすぐ傍にある大徳稲荷神社へ……」

 

恭平
「今まで見てきたものと比べて、子狐の首の向きが異なりますが、きちんと親子お揃いです。
 ここは池袋やお茶の水から電車で約一時間の場所。
 社殿の建築様式には地域性がみられます。お稲荷さんも地方によって微妙に変化してゆくのでしょうか?
 ……俺じゃ荷がかちすぎる。キツネに頼もう!」

 …………。
 ……。
 …………。

恭平
「ただいまー。
 おいキツネ、東京土産に、神戸名物・人工衛星饅頭を買ってきてやったぞ」

キツネ
「突っ込めぬ! 枕が長すぎるのじゃ!
 もう尺がほとんど残っておらぬではないか!!」

恭平
「実はな関東で―――」

キツネ
「ワチは天狐じゃ。
 チビスケの心は既に悟っておるわ。ついて参れ!」

 すすすぅーーーっ

 

キツネ
「ほれ、二宮神社じゃ。
 祭神は正勝吾勝勝速日天忍穂耳尊(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)での、
 大事において出しゃばらず、裏方に徹した神じゃ。
 この神を祀っておるおる社は、全国的にも珍しい」

恭平
「その正勝さんは子連れキツネと関係があるのか?」

キツネ
「否、ワチがチビスケに見せたいのは、ここの境内にある稲荷神社じゃ」

 てくてくてく……

 
恭平
「うおっ!? な、なんでタヌキの石像が―――」

キツネ
「このデレスケめ! この方はタヌキなんぞではないわ。
 おイネさんと言うての、キツネの妊婦さんなのじゃ」

恭平
「お、お稲荷さんでも妊娠するのか!?」

キツネ
「なにを驚いておる、当たり前の事ではないか。
 神は子をもうける。
 人も人と結ばれ子を宿す。
 神の使いであるワチ等が、その枠から外れてしまう道理はなかろう」

恭平
「い、いつもはチャランポランなキツネなのに、今回は立派な事を言ってる……。
 要するに俺が珍しがっていた子連れ像は、ごく自然な意匠だと?」

キツネ
「然り。
 チビスケの目が近かったにすぎぬ。
 ワチが憑いておるせいか、キツネに偏重しがちじゃが、神吏は稲荷のみに非ず」

 てくてくてく……

 
キツネ
「出発前に阿保天神社の狛犬を見よ」

恭平
「出発???」

 
キツネ
「ほっほっほー、狛犬も子を連れておろう?
 ワチ等は人と同じものなのじゃ。
 んむ、分かったところで、そろそろ行こうかの」

恭平
「何処へだ?」


キツネ
「むにょ? 聞いておらぬのかや?
 音声収録で疲れた身心を癒すべく、有馬温泉の宿泊券を貰ったのじゃ。
 ぺあでご招待じゃから、ワチを連れていってたも」

恭平
「……彗佳じゃ駄目なのか? 俺に選択権はないのか?
 てゆーか、宿泊券わたされたの皆に内緒にしてるんじゃないのか?」

キツネ
「ぶ、ぶみっ!
 有馬には温泉パンや、よい湯まんじゅうといった銘菓があるのじゃ。
 ワチに奢って善徳を積むがよかろう」

恭平
「結局、お前は食欲魔神か!」

キツネ
「ちぇっくいんの締め切りまで、あと一時間なのじゃ。
 ワチから券を取り上げ、他の娘子等を選んでおる猶予はないのぅ……のぅ?」

恭平
「く……!」

キツネ
「ほっほっほー、次回は旅にグルメに温泉特集じゃ。
 これで視聴率はいただきじゃ」

恭平
「いつからテレビになったんだ……?」


♪知ってる神社を〜、歩いてみたら〜
  ♪余計な知識が〜 たくさん増えた〜

 ………………。
 …………。
 ……。
 続く?



かいたひと/しゃしん:中本穂積


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