<第一回>

♪知ってる〜、神社を〜、歩いてみたい〜
     ♪どこか近場で(取材を)すませた〜い〜


恭平
「……」

キツネ
「ほっほっほー、ユーザーの諸兄よ、ご無沙汰しておるのぅ。
 ここは星追い天狐のワチと、そのお付きの者・チビスケのこんてんつなのじゃ」

恭平
「………」

キツネ
「こりゃ、どうしたのじゃ? きちんと挨拶をいたせ」

恭平
「いや、ちょっと気になってな……。
 いいのか、このオープニングテーマ? 妙にパクリくさいんだが―――」

キツネ
「そんな危険発言はやめてたも!
 だいたい、神社建築に興味があるチビスケの発案で、はじめたこーなーではないか!」

恭平
「そ、そうだったな。
 同時に『おキツネsummer』の作中には『和』の心が含まれてるから、神社探訪を通してユーザーの皆さんにも、それに触れてもらおう、と」

キツネ
「んむ、思い出したかや?
 それでは早速、お参りと行こうかの」

恭平
「それじゃ、いってきま〜す」

 ……。


キツネ
「ほれ、キツネ塚古墳へ到着したのじゃ」

恭平
「……神社じゃないだろ此処?
 のっけから主旨を外れまくってるじゃないか」

キツネ
「そのへんはキツネ繋がりで多目にみてたも」

恭平
「俺は古代遺跡に詳しくないんだが……」

キツネ
「てひっ、ワチに任せるのじゃ。
 この古墳は明石海峡を見下ろす丘陵上に作られておっての、六世後半の円墳と推測されておる」

恭平
「ほうほう。
 まるでキツネ塚の出入口に建ってる、説明看板を孫引きしているかのようだ」

キツネ
「ぶみっ」

 ポカポカポカポカポカポカポカッ

恭平
「痛でででででででで!?」


キツネ
「ご覧の通り、二段斜面の墳丘からは樹が何本も生えておる。
 これも時のうつろいじゃの。
 キツネ塚はきちんと整備されて今日に遺されておるものの、案外、自然の中に埋もれてしまい、未発見となっている墳墓は多いのではないか?」

恭平
「俺に聞かれてもなぁ」

キツネ
「ちと周りを散策して見ぬか?
 この世は不思議に満ちておるのじゃ、チビスケにも大発見ができるやも知れん」

 てくてくてく


キツネ
「ふむぅ、現在は市民広場となっており、周辺にはこのように歩道がふたつ並走しておる。
 キツネ塚古墳は当時として珍しい、二重の堀で囲まれておったからの。その名残りじゃろう」

恭平
「なあ、この遺跡どうしてキツネ塚って呼ばれてるんだ?」

キツネ
「知らぬ」

恭平
「おい、お前天狐だろ!」

キツネ
「神の使いでも、知らぬものは知らぬ。
 そう性急に知識を求めずともよい。往時をしのびつつ周辺を散策―――」


恭平
「あっ!? 洋館だ、近代建築だ! 旧武藤邸だ!!
 わーい、わーいっ」

 

 

 パシャ、パシャ、パシャ、パシャ!

キツネ
「チ、チビスケ、そんな大量に写真を撮ってしもうたら―――」

恭平
「円形バルコニーが実に素晴らしい!
 アメリカンコロニアル様式の影響が見られる……そうは思わないかキツネ!?」

キツネ
「どーでもよい」

恭平
「あ……デジカメのメモリー無くなっちゃった。
 ………帰っていいか?」

キツネ
「このデレスケめ!
 キツネ塚へ来たのは、天狐一流の伏線じゃ!
 めもりーごとき神通力で何とかしてやるから、今度こそ神社へ詣でるのじゃ!!」

恭平
「な、なんて現実的な能力なんだ」

 …………。
 ……。

キツネ
「そんなこんなで、キツネ塚と同じ市内にある小路八幡宮神社へやって来たのじゃ」

恭平
「面白いな、住宅街の路地を抜けると、不意に鳥居が出現した。
 この先は行き止まりか?」


キツネ
「然り、人のための小道や橋はあっても、自動車は通れぬ。
 社頭風景から、分からぬか?
 この神社は周辺よりやや高い位置に建立されておる。向こう側は下り坂じゃ」

恭平
「特筆すべき点じゃないと思うが……。
 町中にあるごく普通の神社じゃないか」

キツネ
「否、実は前方後円墳の上に建てられておる。社殿は後円にあろう」

恭平
「す、すごいな!
 言われてみれば確かにそんな風に見えてくるが、言われなければ気付かなさすぎる!!」

キツネ
「もっと素直に感動してたもっっ」




 パシャ、パシャ

キツネ
「撮影時刻は午前中じゃ。
 日差しからもわかるように、社殿は南直しておらず、東南に面しておる」

恭平
「普通は南向きに建てられてるよな、何かいわれがあるか?」

キツネ
「古墳との関連や詳しい事は不明じゃが、この神社には興味深いえぴそーどがあってのぅ。
 昭和のはじめに改築された際、本殿の真下より刀剣鎗先が多数発掘されるも、神威をおそれてそのまま埋め戻したのじゃ」

恭平
「昭和か……古代ならいざ知らず、時代的に考えて、それは本当だろうな。
 考古学的な研究はさておき、物語のギミックとしてみれば、とても心惹かれるぞ」

キツネ
「ほっほっほー、『おキツネsummer』の作中にも神社が出てくるからのぅ。
 チビスケ等がひつ夏を過ごす星稜高原の神社には、もでるが三つ存在しておる」

恭平
「よし、万が一このコーナーが続くようなら、いずれその三社も詣でよう」

キツネ
「んむ、ついでにご当地であも(食べ物)を買って、ワチに献上してたも」

恭平
「そ、それが目当てでパートナー役を買って出たのか、キツネ……?」

キツネ
「てひひひ。
 ではでは、ゆーざー諸兄よ、第一回目はこれで終了じゃ。さらばなのじゃ〜」

 ………。




キツネ
「さあチビスケ、帰る途中、駅前で『ぼっかけうどん』を啜るのじゃ」

恭平
「ぶっかけうどんか……もう秋口なのに、そんな冷たいもの食べたら、お腹壊すぞ?」

キツネ
「ぶっかけではない、ぼっかけじゃ。
 この地方に伝わる麺類で、肉うどんよりも奥深い――――」

 ………………。
 …………。
 ……。
 続く?


かいたひと/しゃしん:中本穂積


Powered By SCORE【しゅこあ!】